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仙台家庭裁判所 昭和32年(家イ)97号 審判 1957年4月17日

申立人 高木勇(仮名)

相手方 高木ミヨ子(仮名)

主文

当事者間の昭和三十一年二月○○○日宮城県○○市長に対してなした婚姻届にもとづく婚姻はこれを取消す。

当事者間に出生した長男和男(昭和三十一年二月○日生)の親権者及監護義務者を相手方ミヨ子と定める。

理由

申立人は主文同旨の調停を求めその申立の実情として申立人は昭和十五年十月○○日高木いほと婚姻の届出をなしたが、昭和三十年十二月○日右いほの承諾なくして協議離婚届出をなした上、昭和三十一年二月○○○日相手方と婚姻の届出をなしたところ、同年九月○日右いほとの協議離婚の戸籍記載が消除され、いほの除籍が回復したため、戸籍上重婚の状態を生じているので、相手方との後婚を取消し度く本申立に及んだ旨述べた。

相手方は、申立人が実情として述べるところを全部認め、申立人との婚姻取消については異議なき旨述べた。

調停委員会は、当事者間に合意が成立し、取消の原因の有無について争がないものと認めたので、当裁判所は申立人本籍地を管轄する水戸地方法務局○○支局長及○○村長に対し所要の照会を発し、必要な事実を調査したところ、○○支局長及○○村長の回答書、同書面添付の申立人の戸籍謄本、申立人に対する昭和三十一年六月○○日付仙台地方裁判所の判決書謄本及同判決書に引用してある起訴状謄本の各記載並に申立人本人審問の結果を綜合すれば、

(一)  申立人は昭和十五年十月○○日高木いほと婚姻入籍させたが、偶々昭和二十九年十月頃相手方と知合い関係を結び、その後同女が妊娠するに至つたので、いほと離婚し相手方と結婚しようと考え、いほに対し、当庁に離婚調停申立をしたが同女は離婚に応じなかつた。そこで昭和三十年十二月上旬頃当時の申立人居室において、相手方と相談の上、かねて用意した離婚届用紙の屈出人欄に勝手に高木いほの氏名などを記載し、同人名義の協議離婚届書を作成しこれを○○市役所において戸籍係員に対し提出受理させた上右離婚届を申立人の本籍地である○○村村役場に送付させ、その頃右村役場において係員をして申立人の戸籍に申立人と高木いほとが協議離婚した旨の不実記載をなさしめた事実。

(二)  右事実にもとづき申立人は昭和三十一年六月○○日仙台地方裁判所において私文書偽造同行使公正証書原本不実記載同行使の罪名で懲役四月(参年間刑の執行猶予)に処せられ該裁判は確定した事実。

(三)  右裁判の通知に接した○○村長は離婚届人に対し所要の訂正申請をするよう戸籍法第二十四条第一項の通知をしたが、訂正の申請をする者がないので職権で所要の訂正をなすべく同条第二項の規定により、水戸地方法務局○○支局へ戸籍訂正許可申請の手続をなし、同支局の許可を得て前示協議離婚の戸籍記載を消除し、いほの戸籍を回復せしめたため、相手方との婚姻が重婚の状態を生じている事実。

(四)  申立人と相手方との間には昭和三十一年二月○日和男が出生し、申立人の届出により同月○○○日○○市長受付、現在申立人の戸籍に申立人と相手方の長男として記載されている事実。

以上の各事実を認めることができる。

以上の事実関係に照らせば、申立人が相手方との間に昭和三十一年二月○○○日○○市長に対してなした婚姻届にもとづく婚姻は重婚の状態を生じていることは相かであり、これが取消を求める本件申立は正当としてこれを認容すべきものである。

次に婚姻取消の審判と同時に、当事者間に出生した長男和男の親権者及監護義務者を定めることが必要であると考えられるが、右親権者及監護義務者を相手方と定めることについても、当事者間に合意が成立しているし、右合意のとおり親権者及監護義務者を定めることは相当と認められる。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 市村光一)

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